人間の條件 DVD-BOX
高校生のとき、原作を夢中になって読み、残りページが少なくなって、これでは祖国目指して満州の曠野を歩く梶の生還は無理かと暗くなった。予備校をサボって全6部一挙上映の映画館に昼前に入り、出てきたら真っ暗だった。長さを感じさせない映画。
映画は原作を忠実に丁寧に描いている。この小説にはこの手法しかないと思う。人道主義と現実に悩むたくましいインテリ仲代達矢も憎々しげな下士官南道郎もぴったり。出演者が張り詰めた演技をしている。ただ、主人公梶が兵役を逃れるために北満の炭坑に行き、主義を譲れずに追いやられた軍の不条理に苦しみ、卑劣なソ連の侵略から逃れて、その人のもとに帰りたい一心で曠野を歩く生命の象徴であり若さが弾ける愛妻美千子役が新珠三千代。これだけのミスキャストも珍しい。星一つ減じた。テレビの藤由紀子の方が適役だった。楊春蘭役の有馬稲子でもよかった(梶役は線の細いテレビの加藤剛より仲代がぴったり)。 梶が、軍隊組織の非情から守ろうとした自由、人命の尊さ、大きな時代の潮流に流されながら抵抗する個人の闘いは今も新しい。もっとも、侵略される中国人は、満州民族から故地を奪った漢民族であるが。もちろんそれは描かれていない。
映画も小説も長すぎて二の足を踏む人には石ノ森章太郎の「「マンガ」人間の条件」もある。
映画は原作を忠実に丁寧に描いている。この小説にはこの手法しかないと思う。人道主義と現実に悩むたくましいインテリ仲代達矢も憎々しげな下士官南道郎もぴったり。出演者が張り詰めた演技をしている。ただ、主人公梶が兵役を逃れるために北満の炭坑に行き、主義を譲れずに追いやられた軍の不条理に苦しみ、卑劣なソ連の侵略から逃れて、その人のもとに帰りたい一心で曠野を歩く生命の象徴であり若さが弾ける愛妻美千子役が新珠三千代。これだけのミスキャストも珍しい。星一つ減じた。テレビの藤由紀子の方が適役だった。楊春蘭役の有馬稲子でもよかった(梶役は線の細いテレビの加藤剛より仲代がぴったり)。 梶が、軍隊組織の非情から守ろうとした自由、人命の尊さ、大きな時代の潮流に流されながら抵抗する個人の闘いは今も新しい。もっとも、侵略される中国人は、満州民族から故地を奪った漢民族であるが。もちろんそれは描かれていない。
映画も小説も長すぎて二の足を踏む人には石ノ森章太郎の「「マンガ」人間の条件」もある。
戦争と人間 DVD-BOX (初回限定生産)
やや値は張るが、購入するのであればやはり作品世界を味わい尽くすためにも(1)佐藤勝の手になる三部作を彩る見事な「メイン・タイトル」など全57曲を収録したサントラCDや特典DVD及び(2)制作秘話やスチール、人間関係図などを含む詳細なブックレットが付いている本BOX−SETを薦めたい。
当初、本作品は監督の構想では「全五部」、日活とのニギリでは「全四部」となっていたようである(ブックレット14〜15頁)。いずれにせよ、全三部を観終わっても、これだけの個性豊かな群像そして名優たちの演技(あるいは怪演)を通じ、脳裏に様々な登場人物の残像が浮かんでついぞ離れない。伍代由介(滝沢修)・喬介(芦田伸介)兄弟やその息女たち(浅丘ルリ子、吉永小百合、高橋悦史、北大路欣也)、標耕平(山本圭)、鴫田駒次郎(三国連太郎)、鴻珊子(岸田今日子)、高畠正典(高橋幸治)、服部達夫(加藤剛)、趙瑞芳(栗原小巻)、狩野温子(佐久間良子)などなど、彼らひとりびとりは一体どのような運命を辿ったのか。第四部そして第五部を観ることができない今となっては、ただただこれを頭の中で想像するしかないのが非常に残念である(寂しい思いがする)。
当初、本作品は監督の構想では「全五部」、日活とのニギリでは「全四部」となっていたようである(ブックレット14〜15頁)。いずれにせよ、全三部を観終わっても、これだけの個性豊かな群像そして名優たちの演技(あるいは怪演)を通じ、脳裏に様々な登場人物の残像が浮かんでついぞ離れない。伍代由介(滝沢修)・喬介(芦田伸介)兄弟やその息女たち(浅丘ルリ子、吉永小百合、高橋悦史、北大路欣也)、標耕平(山本圭)、鴫田駒次郎(三国連太郎)、鴻珊子(岸田今日子)、高畠正典(高橋幸治)、服部達夫(加藤剛)、趙瑞芳(栗原小巻)、狩野温子(佐久間良子)などなど、彼らひとりびとりは一体どのような運命を辿ったのか。第四部そして第五部を観ることができない今となっては、ただただこれを頭の中で想像するしかないのが非常に残念である(寂しい思いがする)。
人間の條件〈下〉 (岩波現代文庫)
全てを読んだが、とてつもない量だった。
比喩表現が多く、ある程度文学作品を読むことに慣れていなければ、作品の世界観を理解することは若干難しいだろう。
字数以上の読みにくさがある。
主人公のカント精神に通じる行動は、平和慣れした飽食時代の人間にはリアルで体験することはできない。
カント精神がどういったものかはかいつまんでしか話せないが、要は自分の行動に見返りを一切求めないということだ。
震災のボランティアとかで、偽善という言葉が目立ったが、カント精神には善も偽善も存在しない。
それ自体が目的だからだ。
恐らく、この点がこの作品の大きなテーマの一つだろう。
しかし、主人公の梶が強靭過ぎて、この点が感情移入が難しいかもしれぬ。
あそこまで拷問されるは殴られるわで、耐えられる人間は真性のマゾか何かしかいないだろう。
比喩表現が多く、ある程度文学作品を読むことに慣れていなければ、作品の世界観を理解することは若干難しいだろう。
字数以上の読みにくさがある。
主人公のカント精神に通じる行動は、平和慣れした飽食時代の人間にはリアルで体験することはできない。
カント精神がどういったものかはかいつまんでしか話せないが、要は自分の行動に見返りを一切求めないということだ。
震災のボランティアとかで、偽善という言葉が目立ったが、カント精神には善も偽善も存在しない。
それ自体が目的だからだ。
恐らく、この点がこの作品の大きなテーマの一つだろう。
しかし、主人公の梶が強靭過ぎて、この点が感情移入が難しいかもしれぬ。
あそこまで拷問されるは殴られるわで、耐えられる人間は真性のマゾか何かしかいないだろう。
戦争と人間 第一部 運命の序曲 [DVD]
左翼少年時代にTV放送でこの映画を観て、自虐の血がたぎった。日本はこんなひどいことを中国や朝鮮で行ったのか!中国人民、朝鮮人民に相済まぬ!未来永劫謝り続けてもまだ足りぬ!日本人であることが死ぬほど恥ずかしい!!!こんな惨いことを日本人にもやったのか!命を懸けて日本軍国主義と戦った日本人=日本共産党は立派だ!・・・・・というように。今考えると、まあお笑い草にもならないが、日本知識人の伝統(華夷秩序を何より尊ぶ)+幼稚で単純で教条的な唯物史観ですなぁ、この映画は。左翼少年はこの両方に弱いのだ。
大人げないが2つのことを言っておきましょう。
ア 日本の近代化の手段には選択肢は極めて少なかったこと。華夷秩序に安住していれば、今頃我々はロシア風の名前を持ちロシア語を話しているだろう。生活レベルは言うまでもありません。もちろん、朝鮮人・韓国人も全く同様。ロシア風の名前を持ちロシア語を話しているだろう。いや、満州も当然ロシア領か。
こういう想像を学校の社会科教員どもは必ず否定する。気楽ですね、幸せですね、社会科の先生方は。何百年も前の、そこで使われている言葉の片言も知らない国のこと、例えばフランス革命について、まるで見てきたように滔々と講義されるのにね。ソビエトやシナ、朝鮮に忠誠心をまだ持ってるの?「進歩史観」+華夷秩序の奴隷だという自覚のない奴隷だよ、あなたたちは。自覚、ないでしょ?
イ 日本共産党とはコミンテルン日本支部であり、世界革命を推し進めるために、そしてその総本山・ソ連を守るために日本を内部から攪乱し崩壊させる活動を行う「露助の犬」「ソ連の第五列」に過ぎなかったこと。いずれも、学校の先生もマスコミも教えてくれなかったもんなぁ。「日本共産党はコミンテルン日本支部として結成された」と教科書には書いてあるが、解説もなく、先生も上のような説明を一切しないんですよ。これは甘えですが。勉強すればよかったんですね、時代のムードに流されず、自分で。立花隆の「日本共産党の研究」で初めて認識しましたよ。恥ずかしいですねぇ、日本人として。
ただし、この映画自体はいつもながらの山本薩夫節。紙芝居的でも面白い。その理由は、悪い奴(例えば滝沢修)でもその人間性をちゃんと描くため。左翼映画と娯楽性を両立させた稀有の存在が山本薩夫。石原裕次郎のような対局にあるようなスターさんにもちゃんと見せ場を作っている。うまいよ、薩ちゃん。
大人げないが2つのことを言っておきましょう。
ア 日本の近代化の手段には選択肢は極めて少なかったこと。華夷秩序に安住していれば、今頃我々はロシア風の名前を持ちロシア語を話しているだろう。生活レベルは言うまでもありません。もちろん、朝鮮人・韓国人も全く同様。ロシア風の名前を持ちロシア語を話しているだろう。いや、満州も当然ロシア領か。
こういう想像を学校の社会科教員どもは必ず否定する。気楽ですね、幸せですね、社会科の先生方は。何百年も前の、そこで使われている言葉の片言も知らない国のこと、例えばフランス革命について、まるで見てきたように滔々と講義されるのにね。ソビエトやシナ、朝鮮に忠誠心をまだ持ってるの?「進歩史観」+華夷秩序の奴隷だという自覚のない奴隷だよ、あなたたちは。自覚、ないでしょ?
イ 日本共産党とはコミンテルン日本支部であり、世界革命を推し進めるために、そしてその総本山・ソ連を守るために日本を内部から攪乱し崩壊させる活動を行う「露助の犬」「ソ連の第五列」に過ぎなかったこと。いずれも、学校の先生もマスコミも教えてくれなかったもんなぁ。「日本共産党はコミンテルン日本支部として結成された」と教科書には書いてあるが、解説もなく、先生も上のような説明を一切しないんですよ。これは甘えですが。勉強すればよかったんですね、時代のムードに流されず、自分で。立花隆の「日本共産党の研究」で初めて認識しましたよ。恥ずかしいですねぇ、日本人として。
ただし、この映画自体はいつもながらの山本薩夫節。紙芝居的でも面白い。その理由は、悪い奴(例えば滝沢修)でもその人間性をちゃんと描くため。左翼映画と娯楽性を両立させた稀有の存在が山本薩夫。石原裕次郎のような対局にあるようなスターさんにもちゃんと見せ場を作っている。うまいよ、薩ちゃん。
人間の條件〈上〉 (岩波現代文庫)
この本を読むと「正義」という言葉が軽く出せなくなります。 また、正義という言葉を多く使っている人が軽く見えてしまいます。
物語は戦争中の日本であり全体主義が強い時代です。 その中で主人公は「正義」を貫こうとします。人間的に良い事をしているはずですが、全体主義の時代の中「変質者」として扱われて行きます。自分の考えを持たずに全体主義という長いものに巻かれていれば、高収入、高い待遇、戦地に行かない特権を楽に手に入れる事が出来た主人公であるが、「正義」の心が勝ってしまいそのような待遇に甘んじることが出来ません。
その後、戦地に行くことになってしまい、最終的には「理想郷」だと思っていた所に行くことが出来ます。でも「理想郷」でも全体主義が力を利かせている世界だと言う事に落胆してしまいます。
本書は上中下の三部構成になっていますが、本に引き込まれてしまうので時間を忘れてしまうと思います。新作がつまらないと思っている人はこのような旧作を読んで見ることをオススメします。
物語は戦争中の日本であり全体主義が強い時代です。 その中で主人公は「正義」を貫こうとします。人間的に良い事をしているはずですが、全体主義の時代の中「変質者」として扱われて行きます。自分の考えを持たずに全体主義という長いものに巻かれていれば、高収入、高い待遇、戦地に行かない特権を楽に手に入れる事が出来た主人公であるが、「正義」の心が勝ってしまいそのような待遇に甘んじることが出来ません。
その後、戦地に行くことになってしまい、最終的には「理想郷」だと思っていた所に行くことが出来ます。でも「理想郷」でも全体主義が力を利かせている世界だと言う事に落胆してしまいます。
本書は上中下の三部構成になっていますが、本に引き込まれてしまうので時間を忘れてしまうと思います。新作がつまらないと思っている人はこのような旧作を読んで見ることをオススメします。