スルタンガリエフの夢―イスラム世界とロシア革命 (新しい世界史)
イスラムの篤学にして、手練の書評家、エッセイストとしても『嫉妬の世界史』など、それこそ羨望するのも畏れ多い。それが著者・山内昌之だ。近年ショウケツ跋扈するええ加減な読み、あるいは読んでいないような書評、読書エッセイとは比較を絶する。彼に匹敵するのは、米原万里亡き現在、鹿島茂くらいではなかろうか。読むべき本、当たるべき資料にしっかりあたっており、その読みの深さも半端ではないのだ。何よりも元手がかかっている。読まずば、評するな!
山内の最高傑作は、本書『スルタンガリエフの夢』である。土肥恒之の『ロシア・ロマノフ王朝の大地』を読んでいて、不図思い出したのが本書だが、これがいまや一般書店では簡単に手に入らなくなっている。本書こそ文庫化すべき古典であると思うがなあ。
(いま手元にないので中身を評することができない。)
山内の最高傑作は、本書『スルタンガリエフの夢』である。土肥恒之の『ロシア・ロマノフ王朝の大地』を読んでいて、不図思い出したのが本書だが、これがいまや一般書店では簡単に手に入らなくなっている。本書こそ文庫化すべき古典であると思うがなあ。
(いま手元にないので中身を評することができない。)
サンクト・ペテルブルク断章―遺伝研究者のロシア滞在記
書店の棚で、表紙写真が目について、思わず手にした。
遺伝研究者のロシア滞在記、と副題にある。
遺伝研究者という職業、およそ、観光ガイドやら、生活体験記には縁がなさそうなのだが。
音楽、美術、文学、といった幅広い芸術にも造詣が深い。大変に柔軟な人柄から、研究者仲間のみならず、運転手、家主と親しく交流し、現在のサンクト・ペテルブルク文化、経済、研究事情を楽しく物語っている。
トウモロコシの遺伝研究が専門であるせいか、野菜全般にも深い関心をもっていて、女性顔負けの積極性で訪れる市場の様子もいきいきと語られ、驚くばかりだ。
学者らしく、便利な地図も随所に載せてあり、観光ガイドにさえ使えるかもしれない。
30年代の絵画には感動しない理由は、政治的に、高緯度が健康に悪い理由?は、科学的に、成る程と納得した。領土を返さないからつきあわない、といっている間に、欧米は、ロシア以前のソ連とも密接な学術交流をしていたという事実には驚いた。線虫でアメリカのダイズが未曾有の凶作になった時には、ソ連のこの研究所から与えられた種から、線虫に抵抗できる種を見つけだして対応した、というのも、冷戦下「敵にダイズを送る」驚愕の出来事だ。
日本のソ連、ロシアとの学術交流は欧米のそれと比較すると、圧倒的に少ないようだ。
目をどこかの国にだけ向け、ゆがんだ交流しかできない国なのかもしれない。
偉い学者先生で、(元?)お役人でありながら、「官僚臭」「学者風」を全く感じさせない率直な言動にも共感する。職業的な記者などより遠慮する部分がないためなのだろうか?
面白さの余り、あっという間に読み終えた。続編が読みたいほどだ。
サンクト・ペテルブルクに観光に出かける場合も、ガイドブックに加え本書を読んでおくと、旅行はさらに楽しいものになるだろう。
遺伝研究者のロシア滞在記、と副題にある。
遺伝研究者という職業、およそ、観光ガイドやら、生活体験記には縁がなさそうなのだが。
音楽、美術、文学、といった幅広い芸術にも造詣が深い。大変に柔軟な人柄から、研究者仲間のみならず、運転手、家主と親しく交流し、現在のサンクト・ペテルブルク文化、経済、研究事情を楽しく物語っている。
トウモロコシの遺伝研究が専門であるせいか、野菜全般にも深い関心をもっていて、女性顔負けの積極性で訪れる市場の様子もいきいきと語られ、驚くばかりだ。
学者らしく、便利な地図も随所に載せてあり、観光ガイドにさえ使えるかもしれない。
30年代の絵画には感動しない理由は、政治的に、高緯度が健康に悪い理由?は、科学的に、成る程と納得した。領土を返さないからつきあわない、といっている間に、欧米は、ロシア以前のソ連とも密接な学術交流をしていたという事実には驚いた。線虫でアメリカのダイズが未曾有の凶作になった時には、ソ連のこの研究所から与えられた種から、線虫に抵抗できる種を見つけだして対応した、というのも、冷戦下「敵にダイズを送る」驚愕の出来事だ。
日本のソ連、ロシアとの学術交流は欧米のそれと比較すると、圧倒的に少ないようだ。
目をどこかの国にだけ向け、ゆがんだ交流しかできない国なのかもしれない。
偉い学者先生で、(元?)お役人でありながら、「官僚臭」「学者風」を全く感じさせない率直な言動にも共感する。職業的な記者などより遠慮する部分がないためなのだろうか?
面白さの余り、あっという間に読み終えた。続編が読みたいほどだ。
サンクト・ペテルブルクに観光に出かける場合も、ガイドブックに加え本書を読んでおくと、旅行はさらに楽しいものになるだろう。