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戦争文学を読む (朝日文庫)
ちょうど昨12月、日本の首相A氏はY神社を訪れ
アジア太平洋戦争でなくなった死者たちに哀悼の意
を表したそうだ。
本書は戦後50年たったころ、戦後文学がどのように
死者を弔ったかを、評論家と歴史家の2人がゲストを
招いて語った記録である。
あのビルマの竪琴、二十四の瞳など、かつて当方、感激
して読んだ作品たちが俎上にのぼせられた。
そして、ああ、読み方とはこういうことだったのか、と
思わせられる面白さである。
以上の2冊のほか、レイテ戦記その他。
これらは、また戦死者たちを哀悼する書なのだと。
小説は、個人を描くものだが、個人は抽象的な存在では
ない。世界との関連の中で生きている。と。
いまのばあいは、個人→戦争→死者という関連の中で、
戦争の構造を分析することが肝要なのに、これらの書は、
戦争の中身を見ないで、ただ戦争は嵐のように生じ、
個人は必然の運命の中で、死んだ。
そして、作家は死者を歴史と社会の外で、普遍的な死一般
として、哀悼するというように描かれた、と。
ちょうどYa神社では、参謀も指揮官も、命令に従った兵隊も
抽象的な死者として、弔われるように。
これが、戦後しばらくの戦争の描き方だった、と。
これを批判する、レイテ戦記、またその後の若い世代の戦争
の扱いが論じられる。。
当方には、実に刺激的な批評だった。
アジア太平洋戦争でなくなった死者たちに哀悼の意
を表したそうだ。
本書は戦後50年たったころ、戦後文学がどのように
死者を弔ったかを、評論家と歴史家の2人がゲストを
招いて語った記録である。
あのビルマの竪琴、二十四の瞳など、かつて当方、感激
して読んだ作品たちが俎上にのぼせられた。
そして、ああ、読み方とはこういうことだったのか、と
思わせられる面白さである。
以上の2冊のほか、レイテ戦記その他。
これらは、また戦死者たちを哀悼する書なのだと。
小説は、個人を描くものだが、個人は抽象的な存在では
ない。世界との関連の中で生きている。と。
いまのばあいは、個人→戦争→死者という関連の中で、
戦争の構造を分析することが肝要なのに、これらの書は、
戦争の中身を見ないで、ただ戦争は嵐のように生じ、
個人は必然の運命の中で、死んだ。
そして、作家は死者を歴史と社会の外で、普遍的な死一般
として、哀悼するというように描かれた、と。
ちょうどYa神社では、参謀も指揮官も、命令に従った兵隊も
抽象的な死者として、弔われるように。
これが、戦後しばらくの戦争の描き方だった、と。
これを批判する、レイテ戦記、またその後の若い世代の戦争
の扱いが論じられる。。
当方には、実に刺激的な批評だった。
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戦争はどのように語られてきたか
まず言えることはこの本は今の日本が抱えている問題の核心をついているということです。タイトル「戦争はどのように語られてきたか」これは実は「戦争はどのように語られてこなかったか」の裏返しになっていることが読み始めるとすぐにわかります。つまり、この本は日本にとって、冷戦の枠組みの中でアメリカの「核の傘」に入り、アジアで経済発展を続けて行こうとする時邪魔になる過去を隠すためにどのような方法が(意図的、無意識的に関らず)とられてきたか、の検証にもなっています。例えば火野葦兵についての対談では「兵隊センチメント」への指摘がなされました。それから上野千鶴子さんは70年代に流行した「自分史」の投稿の中に自己正当化的なものが多いと指摘します。他にも様々「過去を語らないため」の「書き換え」に用いられた技術(センチメント、自己正当化、客観性という名の傍観)が次々と洗われます。そして最後には日本人は歴史を十分に語ってこなかったから現在自分たちを捉えている問題の本当の姿がわからず、戸惑っている、ということが見えてきます。それが私がこの本を読んで気がついたことの概要です。しかし、私見ですが、90年代以降、冷戦構造が崩れ、アジア経済も勃興してゆく中で、日本はとうとう「歴史を語ること、あるいは受け入れること」を迫られているように思います。そうした中この本はとても大事な役割を果たしていくのではないでしょうか。中にはかなりきちんと戦争を語ってきた文学作品もあり「黒い雨」と「父と暮らせば」はこの本の中でそうした一例として出てきています。他にもこの本のよさはたくさんありますし、レビューを見ておもしろいと思った方はもちろん、違うんじゃないの? と思った方も是非この本を直接手に取って確かめてみてください。