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Wild at Heart [VHS]
珍しや、デビッド・リンチの直截的な、激しくも純粋なラブ・ストーリーの傑作。いつものリンチ・ワールドは、やや抑制されているものの、観る者を不安に陥れる不気味で緊迫感溢れる悪魔的迷宮世界は、随所で垣間見る事が出来る。そして、唐突に現れる夥しい死者の山、山、山、、、その強烈な暴力と、異様なまでのセックスへの耽溺は、他作品を凌ぐほどだ。ヘビメタ・サウンドに、ビュイックのオープン・カー、サングラス姿で、テキサスをぶっ飛ばすニコラス・ケイジとローラ・ダーンが超クールだが、ウイレム・デフォーやダイアン・ラッド(L・ダーンとは、実の母娘!)の怪演ぶりも凄い。ハリー・ディーン・スタントンの、断末魔の観念した顔のクローズ・アップに、テキサスの道行き看板が繋がるのは、ヴィム・ヴェンダース映画のもじりか?同時期に開始された「ツイン・ピークス」からも、シェリル・リー、シェリリン・フェン、グレース・ザブリスキらが出演しているが、良い魔女役のローラ・パーマー以外は、皆、アブナイ役柄だ(笑)。ラスト、最愛の女性ダーンに愛を誓い、“LOVE ME TENDER”をフル・コーラス熱唱するケイジが、気恥ずかしくも、リンチ的ラブ・ストーリーを成就させる。