緑の毒 (角川文庫)
医者で「川辺クリニック」の院長・川辺は、勤務医の妻・カオルとの仲がうまくいっていない。
カオルが勤務先の医師・玉木と不倫関係にあるのだ。
ある夜、玉木の姿を目撃した川辺は、嫉妬と邪心から、1人暮らしの女性の部屋に侵入し、レイプを犯す。
実は川辺はレイプ魔で、過去にも3回のレイプ経験があるのだ。
ここを出発点に多彩な人間関係が進展していく。
ネットを利用して連絡を取り合う被害女性たち。川辺クリニックの憎悪に満ちた人間模様。
地方の大病院の後を継ぐため、いやいや故郷に帰った川辺の元共同経営者・野崎、等々。
読んでいて話があちこちに飛びすぎている感がした。
だが、人間の心の中に潜む邪悪な心を描きようは、さすが桐野さんだと思う。
桐野ファンにとっては、楽しむことのできる1冊ではないだろうか。
また、ラストでネットやツイッターを駆使して川辺が追いつめられるシーンは爽快だった。「I`m sorry, mama」のラストと似ている。
ただし個人的には、野崎やカオルや玉木や川辺クリニックに勤務している女性たちがこれからどうなるのか等、
未解決のまま残される点が多すぎるのが気になったので、星1つ引いて4つ星にします。
カオルが勤務先の医師・玉木と不倫関係にあるのだ。
ある夜、玉木の姿を目撃した川辺は、嫉妬と邪心から、1人暮らしの女性の部屋に侵入し、レイプを犯す。
実は川辺はレイプ魔で、過去にも3回のレイプ経験があるのだ。
ここを出発点に多彩な人間関係が進展していく。
ネットを利用して連絡を取り合う被害女性たち。川辺クリニックの憎悪に満ちた人間模様。
地方の大病院の後を継ぐため、いやいや故郷に帰った川辺の元共同経営者・野崎、等々。
読んでいて話があちこちに飛びすぎている感がした。
だが、人間の心の中に潜む邪悪な心を描きようは、さすが桐野さんだと思う。
桐野ファンにとっては、楽しむことのできる1冊ではないだろうか。
また、ラストでネットやツイッターを駆使して川辺が追いつめられるシーンは爽快だった。「I`m sorry, mama」のラストと似ている。
ただし個人的には、野崎やカオルや玉木や川辺クリニックに勤務している女性たちがこれからどうなるのか等、
未解決のまま残される点が多すぎるのが気になったので、星1つ引いて4つ星にします。
OUT [DVD]
~ いやぁ面白い面白い。ワタシ,こういう映画大好きなんだよね。東京郊外に住む主婦・マサコ(原田美枝子),夫はリストラに遭って求職中……ということになっているが毎日どこへ行っているのか分からない。息子はなにが気に入らないのか口を利かなくなってずいぶん経つ……。そんな彼女の元にある日,弁当工場のパート仲間ヤヨイ(西田尚美)から切羽詰まっ~~た声で電話がかかってくる。「あ,マサコさん,助けて。あたし,ダンナ殺しちゃった!」(笑),いや笑ってる場合ぢゃないか。
~~
妊娠中のヤヨイはギャンブル狂いで暴力的な夫の寝込みを襲って縊り殺してしまったあと,我に返って電話をして来たのだった。心ならずも巻き込まれたマサコは,パート仲間で親分肌のヨシエ(倍賞美津子)に助けを求め,自宅の風呂で死体を解体し始める。……そこにやはりパート仲間でカード破産に瀕しているクニコ(室井滋)が借金の申し込みにやって来て…~~…。
~~
家庭崩壊,DV,老人介護にカード破産と,現代を象徴するような問題のあれこれにどっぷりつかった女達の,ヤバくもたくましい精神の脱出行。走り出したら停まれない,日本版「テルマ&ルイーズ」である。出演は上の4人の他,なかなかシブい街金のオトコに香山照之,ヤヨイの亭主殺しを疑われるヤクザに間寛平(喋らないと怖い)。ヨシエの寝たきりの義母にヴ~~~~ェテラン千石規子……。原作ファンにはイマイチの評判らしいが映画としてはキチンとまとまっていると思う。 ところで原田美枝子って,若い頃の「青春の殺人者」でも風呂で死体をバラバラにしてなかったっけ?~
~~
妊娠中のヤヨイはギャンブル狂いで暴力的な夫の寝込みを襲って縊り殺してしまったあと,我に返って電話をして来たのだった。心ならずも巻き込まれたマサコは,パート仲間で親分肌のヨシエ(倍賞美津子)に助けを求め,自宅の風呂で死体を解体し始める。……そこにやはりパート仲間でカード破産に瀕しているクニコ(室井滋)が借金の申し込みにやって来て…~~…。
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家庭崩壊,DV,老人介護にカード破産と,現代を象徴するような問題のあれこれにどっぷりつかった女達の,ヤバくもたくましい精神の脱出行。走り出したら停まれない,日本版「テルマ&ルイーズ」である。出演は上の4人の他,なかなかシブい街金のオトコに香山照之,ヤヨイの亭主殺しを疑われるヤクザに間寛平(喋らないと怖い)。ヨシエの寝たきりの義母にヴ~~~~ェテラン千石規子……。原作ファンにはイマイチの評判らしいが映画としてはキチンとまとまっていると思う。 ところで原田美枝子って,若い頃の「青春の殺人者」でも風呂で死体をバラバラにしてなかったっけ?~
グロテスク〈上〉 (文春文庫)
社会的立場の高い女性には行動の自由が許される。生活に困らない収入もある。その自由が自我の肥大を生み出す。東電OL事件に興味を持って読んだ感想。本当にグロテスクである。
いみじくも作中のQ女子高の木島教師が「僕たちは学校で科学的なことしか教えていなかった。もっと人間性を教えるべきだった」と悔いるように、Q女子高という小さな世界の中に進化論的なパワーゲームの世界が縮約されている。そこで育った4人のグロテスクな女たち。
この小説は悪意に満ちている。まったく歯に衣を着せないやりとりが読んでいて爽快になるぐらい。そして4人の女性とも孤独である。孤独への恐怖が4人をねじ曲げていく。
作品中、もっともグロテスクなのはやはり和恵である。自己が分裂してしまった彼女は、しだいに社会と自分、という壁を失っておぞましい怪物になっていく。なぜ高校時代の地味な彼女が変貌したのか。それは多分、ユリコの姉が言うように、自分や世間に対して、あまりにも鈍かったから。彼女の変貌を彼女なりの「成功」と呼べるだろうか。私はそれは違うと思う。彼女が摂食障害であるというエピソードはあまり語られていないが、摂食障害というのはまさに「自分」と「世間」の境界を失っていく病気だし、その根本的な原因は和恵が直面した問題と、基本的に同じである。ミツルがカルト教団の幹部になってしまった所や、容疑者チャンの身上書(彼の作り話かもしれないが)は多少演出が大仰だと思うが、チャンの住んでいた中国内陸部の貧困と日本に来てからの底辺の生活は、現代の日本で起きている「過剰と腐敗」の鏡となっている。
女は年を取るごとに「モノ」ではなく「人」になっていく。だからモノとして扱われる売春の世界では、客も本人も辛くなっていくのである。もっと「人」として輝いていく道などたくさんあったのに。私たちは和恵や「ユリコの姉」に似た部分はあるけれども決して同じにはなれない。
いみじくも作中のQ女子高の木島教師が「僕たちは学校で科学的なことしか教えていなかった。もっと人間性を教えるべきだった」と悔いるように、Q女子高という小さな世界の中に進化論的なパワーゲームの世界が縮約されている。そこで育った4人のグロテスクな女たち。
この小説は悪意に満ちている。まったく歯に衣を着せないやりとりが読んでいて爽快になるぐらい。そして4人の女性とも孤独である。孤独への恐怖が4人をねじ曲げていく。
作品中、もっともグロテスクなのはやはり和恵である。自己が分裂してしまった彼女は、しだいに社会と自分、という壁を失っておぞましい怪物になっていく。なぜ高校時代の地味な彼女が変貌したのか。それは多分、ユリコの姉が言うように、自分や世間に対して、あまりにも鈍かったから。彼女の変貌を彼女なりの「成功」と呼べるだろうか。私はそれは違うと思う。彼女が摂食障害であるというエピソードはあまり語られていないが、摂食障害というのはまさに「自分」と「世間」の境界を失っていく病気だし、その根本的な原因は和恵が直面した問題と、基本的に同じである。ミツルがカルト教団の幹部になってしまった所や、容疑者チャンの身上書(彼の作り話かもしれないが)は多少演出が大仰だと思うが、チャンの住んでいた中国内陸部の貧困と日本に来てからの底辺の生活は、現代の日本で起きている「過剰と腐敗」の鏡となっている。
女は年を取るごとに「モノ」ではなく「人」になっていく。だからモノとして扱われる売春の世界では、客も本人も辛くなっていくのである。もっと「人」として輝いていく道などたくさんあったのに。私たちは和恵や「ユリコの姉」に似た部分はあるけれども決して同じにはなれない。
柔らかな頬 デラックス版 [DVD]
ドラマを見た後に原作を読んだのですが、原作の内容にきちんと沿って映像化してたんだってことが分かりました。キャストも原作のイメージを裏切らず、よくこれだけピッタリの配役ができたもんだと感心してしまいました。全体を通して説明が少なく暗喩的で、決して分かりやすいドラマではありませんが、良質でいいドラマだと思います。あと、天海祐希のエロい演技も必見です。松岡俊介との絡みでは、同性ながらゾクゾクしてしまいました。
だから荒野
「毒」の多い小説を書く著者ですが今回の作品はどこにでもいそうな主婦が主人公。
日常生活で満たされぬ思い、一番理解して欲しい家族に理解されない葛藤などが丁寧な描写で描かれています。
自分の誕生日に車もろとも家出をする主人公朋美にかなり感情移入しながら最後まで一気に読めました。
夫、2人の息子、途中から登場する老人
全員が終始脳内映像で動いていました。
ストーリー的には納得出来ない場面も少しありましたが(亀田の真意、ころころ変化する息子の言動など)
それを持ってしても、人間の不可思議な面と捉えたら納得出来る様な気がします。
「OUT」の様な毒々しい小説を読みたい方にはもの足りなさが残るかも知れませんが
私的には日常の些細な場面にこそ毒が潜んでいると思うので満足出来る小説でした。
日常生活で満たされぬ思い、一番理解して欲しい家族に理解されない葛藤などが丁寧な描写で描かれています。
自分の誕生日に車もろとも家出をする主人公朋美にかなり感情移入しながら最後まで一気に読めました。
夫、2人の息子、途中から登場する老人
全員が終始脳内映像で動いていました。
ストーリー的には納得出来ない場面も少しありましたが(亀田の真意、ころころ変化する息子の言動など)
それを持ってしても、人間の不可思議な面と捉えたら納得出来る様な気がします。
「OUT」の様な毒々しい小説を読みたい方にはもの足りなさが残るかも知れませんが
私的には日常の些細な場面にこそ毒が潜んでいると思うので満足出来る小説でした。