東京空襲下の生活日録 「銃後」が戦場化した10カ月
今,東京は五輪開催が決まって沸いています.しかし1945年3月10日,東京の下町は廃墟と化しました. JR上野駅のホームに立つと東京湾が見えるほどだったと本書にあります.東京大空襲のせいです.9日夜半,米軍爆撃機B29,325機が来襲し,1665トンもの焼夷弾をまき散らしました.その結果,268,358軒の民家を焼き尽くし,およそ10万人の犠牲が出た.私の住むマンションの真ん前は「大横川親水公園」という公園ですが,ここは戦争中は大横川でした.川というより掘り割りで,江戸時代に掘削し,隅田川から水を引いて造った物流のための人工河川の一つでしたが,猛火を避けた住民は隅田川へ,掘り割りへと飛び込みます.地には炭化した死体がそこかしこに横たわり,川面には溺死体が数え切れないほど浮かんでいた.私は別な本で知っています.戦後の東京はここから再スタートしたのです.何故,民間人がこれほど多く死ななければならなかったのか.せめてこの時点で敗戦を決めていたなら,以後の空爆犠牲者はいないし,ヒロシマ・ナガサキの惨劇もなかった.民間人を犠牲にしながら戦争を続行していたこの国の指導者は狂っていたとしか思えません.彼らが護るべきは国民でなく「国体」だった.国民は「国体」を護らせるための使用人,もしくは道具のようなものだった.人権などありません.戦況は日に日に悪化し,やがて本土決戦,男も女も竹槍で米軍と戦えと鼓舞するようになる.そうは言われても国民は食料に窮して戦う体力は既になかった.皆飢えていたのです.これらのことが本書を読めば分かります.私は下町大空襲の模様を空から写した米軍の記録映画を見たことがあります.眠っている住民への無差別の殺戮行為です.戦争というより大規模テロです.昭和天皇は皇居からこれを見ていた筈です.8月15日の終戦詔勅がせめてヒロシマの前にあって欲しかったと痛切に感じます.
ところで皆さんは「国体」をご存じですか.日本は神と崇められる天皇に統治される国.国体はそれを指します.天照大神から昭和天皇まで脈々と受けつがれている神の国 --- .「神国日本」は決して敗れることはない.最後の土壇場では神風が吹くと説いて軍部は国民を洗脳し,信じ込ませてきた.しかし8月6日に広島に,続いて9日に長崎に原爆が次々投下されて全ては終わりました. 国体を護持したいがために戦争を長引かせ,講和のタイミングを計っていた軍部の計算も連合国から13日に「天皇の地位は---連合軍司令官の制限の下に置かれること」の正式通知で霧消し,8月15日正午のあの詔勅に至ります.まことに「絶え難きを堪え,忍び難きを忍ぶ」痛恨のラジオ放送でした.私は当時8歳で,大人たちに混じってこれを聞いていました.このレビューを書くために詔勅全文をネットで読みましたが,国体護持を示唆する文言はありません.昭和天皇自身には国体云々の意識はなかったと判断します.戦争犯罪は連合国の手で裁かれました.戦争犯罪人が靖国神社に合祀された段階で天皇は靖国参拝は中止した.昭和天皇は軍部の傀儡だったのでしょう.靖国参拝の中止は戦争犠牲者の家族にとって的確な判断だったではないですか.
本書は敗戦に至る10ヶ月を市民の目で描写しています.多くの方々に読んで貰いたいと望みますが,とくに若者たちに薦めます.これからの日本を背負うのは若者です.その若者に太平洋戦争前の日本を知り,戦中を知り,敗戦した日本を知り,これからの日本を考える資料の一つになれば戦争犠牲者の慰霊になると信じます.
ところで皆さんは「国体」をご存じですか.日本は神と崇められる天皇に統治される国.国体はそれを指します.天照大神から昭和天皇まで脈々と受けつがれている神の国 --- .「神国日本」は決して敗れることはない.最後の土壇場では神風が吹くと説いて軍部は国民を洗脳し,信じ込ませてきた.しかし8月6日に広島に,続いて9日に長崎に原爆が次々投下されて全ては終わりました. 国体を護持したいがために戦争を長引かせ,講和のタイミングを計っていた軍部の計算も連合国から13日に「天皇の地位は---連合軍司令官の制限の下に置かれること」の正式通知で霧消し,8月15日正午のあの詔勅に至ります.まことに「絶え難きを堪え,忍び難きを忍ぶ」痛恨のラジオ放送でした.私は当時8歳で,大人たちに混じってこれを聞いていました.このレビューを書くために詔勅全文をネットで読みましたが,国体護持を示唆する文言はありません.昭和天皇自身には国体云々の意識はなかったと判断します.戦争犯罪は連合国の手で裁かれました.戦争犯罪人が靖国神社に合祀された段階で天皇は靖国参拝は中止した.昭和天皇は軍部の傀儡だったのでしょう.靖国参拝の中止は戦争犠牲者の家族にとって的確な判断だったではないですか.
本書は敗戦に至る10ヶ月を市民の目で描写しています.多くの方々に読んで貰いたいと望みますが,とくに若者たちに薦めます.これからの日本を背負うのは若者です.その若者に太平洋戦争前の日本を知り,戦中を知り,敗戦した日本を知り,これからの日本を考える資料の一つになれば戦争犠牲者の慰霊になると信じます.