アポロンの島 (講談社文芸文庫)
本書は、去年に80歳で亡くなられた小川国夫さんのデヴュー作。かつ、おそらく最も良く知られた小川さんの作品かと思います。
これは至極、私個人の勝手な読書歴によった印象なのですが、私がはじめてこの本を手に取ったのが19の頃だった。その時は、全てを通して一息に読み飛ばす形だったのを覚えている。…また、ただ読み飛ばすことのできるような文体で書かれていた。
しかし、本書の各場面の“印象”のうち、私に鮮やかに刻まれた箇所は、数年経っても無くならなかった。彼のギリシア旅行に取材されたもの…ナフプリオやミコノスを舞台にした雨降りの場面などは、個人的に東欧に憧憬を持っているからなのか、とくに忘れられないものだった。
例えば、本書の場面に数ある“情景”“人物間の会話”…は、それ自体淵のように開けても居るけれど、そのまま何事でもないように読み飛ばすこともできる。どこか引っかかるか。そして何故、そこに引っかかるのか。そこに一体に何があるのか。…それは読者の数だけあるとは言えないでしょうか。結局、この作品を鏡にして、読者は自己自身の淵(過去)を覗くことになる。私は本書をそんな風に解しています。
“エレウシス美術館”“遊歩道”など、1枚の絵を見ているよう。それは絵葉書的なものでは無く、或る心象を映し出した風景画とは言えないでしょうか。
これは至極、私個人の勝手な読書歴によった印象なのですが、私がはじめてこの本を手に取ったのが19の頃だった。その時は、全てを通して一息に読み飛ばす形だったのを覚えている。…また、ただ読み飛ばすことのできるような文体で書かれていた。
しかし、本書の各場面の“印象”のうち、私に鮮やかに刻まれた箇所は、数年経っても無くならなかった。彼のギリシア旅行に取材されたもの…ナフプリオやミコノスを舞台にした雨降りの場面などは、個人的に東欧に憧憬を持っているからなのか、とくに忘れられないものだった。
例えば、本書の場面に数ある“情景”“人物間の会話”…は、それ自体淵のように開けても居るけれど、そのまま何事でもないように読み飛ばすこともできる。どこか引っかかるか。そして何故、そこに引っかかるのか。そこに一体に何があるのか。…それは読者の数だけあるとは言えないでしょうか。結局、この作品を鏡にして、読者は自己自身の淵(過去)を覗くことになる。私は本書をそんな風に解しています。
“エレウシス美術館”“遊歩道”など、1枚の絵を見ているよう。それは絵葉書的なものでは無く、或る心象を映し出した風景画とは言えないでしょうか。
銀色の月――小川国夫との日々
小川国夫を知るために購入、奥様である作者が作家小川国の傍らでその仕事ぶりを表にでることなく、静かにみておられた奥様に感服。特に、帰って来ない夫を女の勘でその滞在先に訪ねられ、女性と居た夫を確認した直後、外に飛び出し慟哭、つわりもあったのが吐いてしまう場面、それを夫の死後作者自身も80歳近くでありながもまた思い出され最後にまた書いておられるところなど、共感して読みました。