北国の帝王 [DVD]
どこまでを開拓時代と呼ぶか?は諸説色々有るがホーボー(Hobo)は、アメリカで19世紀の終わりから20世紀初頭の世界的な不景気の時代、土地から土地へ働きながら渡り歩いた渡り鳥労働者のこと。彼らの中から「アメリカントラディショナルフォークソング」が産まれた。「ランブリング」ジャック・エリオットとかウディ・ガスリーが歌っていたし、ピート・シーガーが拾い上げカバーした名曲も多い。ホーボーは基本的に金を持っていない。季節労務者として移動して働くにも鉄道のタダ乗りをして移動する。そのタダ乗りの腕が凄い「北国の帝王」がリー・マービン、その帝王を絶対に自分の乗務する列車に乗せないように冷血無比の戦いを仕掛けるのが車掌のアーネスト・ボーグナイン。「帝王」はあちこちにコネや仲間が居て、弟子志願の調子の良い若造シガレットが絡む。行きがかりで絶対にアーネスト・ボーグナインが乗務する19番列車に決死のタダ乗りを挑むリー・マービン。あまり書くとネタバレするのでここまで、とするが、この映画に「女性」は殆ど出てこない。実に汗臭い映画だから好みは別れる。しかし名脇役二人が怖い顔で戦うシーンは映画好きには堪らない。しかも監督が名匠ロバート・アルドリッチだから半端じゃなく男臭い。ちょこっとだけ色っぽい女性のカットが有るが殆ど男だけしか出てこない。気障でお調子者のシガレット役がキース・キャラダインである。キャラダイン一家の次男である。世界恐慌時代の荒んだ感じが全編にみなぎり、どことなく開拓時代の雰囲気を残している。映画を見ていて「あ、当時は帽子を必ずかぶってたな」と妙な事に気づいてしまった。兎に角この映画は他に似た様な映画も無いという位凄い映画である。名脇役共演もこれに尽きると思う。是非ご覧あれ。