キューブリックはこの映画を創ったと言う事だけで、他の作品に関係無く最高の映画監督だと言えます。当時、現実にありえるあまりにリアリティーな問題を取り上げたこと事態、時代背景を考えればとんでもないことだったと考えるべきでしょう。スピルバーグの「１９４１」やコッポラの「地獄の黙示録」などは全て過去の出来事でしたが、これはリアルタイムで訪れるかもしれない終末を描ききっている凄み。そして開き直りともいえる全体を貫く計算し尽くされた価値観。タイトルの手書き文字から始り、はっきりと合成とわかる執拗に現れるＢ52の機体。当時最先端の技術であった戦略爆撃機をマニュアル通りに忠実に実行する機長。セラーズやスコットの演技もすばらしいのですが、この映画の主役はやはり人格化されたＢ52です。そして、その道具によってもたらされる核。問題なのは核そのものではなく、それを自由に操ることのできる人間であり、道具としてのＢ52なのだといえます。最後に、皮肉にもあんな形に見えてしまうように核爆発を見せているのはとてつもなく象徴的であり、日本人にとっては辛いものなのですが、愛さずにはいられない作品です。

キューブリック監督は、オリジナルネガが失われていたこの作品の上映用プリントがよくない状態であることに長年不満を持っていました。凝り性の彼は、自ら保管していた状態の良い保存用プリントをスチールカメラで１コマ１コマ撮影してゆくという気の遠くなるような作業を行うことで、鮮明な画質の新規ネガを作製しました。
監督の死後、その新ネガと改善点が記された遺稿メモから作られたこのBlu-rayは、DVDでもまだ見られた傷や画面のガタつき等の不具合をデジタル処理で修正、ほぼ完璧なレストアを施しています。
シャープネスが増し辛辣さがより際立った鋭い構図、悪夢のように光と影が交錯する照明、適度なフィルム粒子で緊迫感あふれる空気の漂う画調が、このディスクでは見事に再生されています。
質の高い報道写真と表現主義の芸術写真が共存しているような白黒撮影の傑作であるこのブラックコメディを存分に堪能できるソフトになっていると思います。

昔のＣＤケースサイズを長年見ていたんですが、
少し画質の劣化なのかザラツキが気になったので、今回トールケースに買い替えです

画質が向上してるんです
デジタルリマスターでもありませんが
かなり明暗とかもクッキリして出来は上々です

キューブリックファンなら誰もがご存知の名作ですし
知らない方がご覧になっても最高のブラックユーモアに惹かれること間違い有りません