ピエール・アンタイ演奏集 (Pierre Hantai : Complete Recordings) (8CD) [輸入盤]
ヨーロッパの古楽界ではベルギーのクイケン三兄弟と並んでフランスでリーダー・シップを取っているのがアンタイ三兄弟で、ヴィオールのジェローム、チェンバロのピエール、トラヴェルソのマルクのそれぞれが既に円熟した古楽奏者としてここに収められた作品集でも協演している。ピエールはグスタフ・レオンハルト門下だが、厳格な師とは明らかに異なった音楽性を持っていてチェンバロの音響に関しても軽快で色彩豊かな効果を好み、楽器の選択や奏法にも彼のそうした感性が良く反映している。彼の演奏には古典的な奏法に支えられた特有の洒落っ気があり、時として大胆とも言える感覚的な美しさで聴き手を惹きつけてやまない魅力がある。その例がCD2のバッハの『ゴールトベルク変奏曲』で、彼は同曲を2003にも再録音しているが、これは1992年の第1回目のセッションになる。チェンバロはバッハがケーテン時代に宮廷に買い入れたミヒャエル・ミートケの二段鍵盤のコピーを使っていて、この楽器の持つ可能性を縦横に駆使した繊細で幅広い表現力に特徴がある。
CD4はドメニコ・スカルラッティのソナタ集で、大型のイタリアン・チェンバロを使用したはじけるような音色と一気呵成の集中力による造形が、作品の野心的な試みを鮮やかに再現している。CD7はフレスコバルディの作品集になり、ここでもその鮮烈なイタリアンの響きが活かされている。フレスコバルディは1583年に生まれた作曲家で、ローマでは教会オルガニストとして活躍したが、これらの曲集はさまざまな形で対位法の手法が試みられていて、その華麗な音響はアンタイならではの柔軟なテクニックによって、咲き乱れる花園のようなイメージを与えてくれる。バッハより100年も前にこうした音楽が存在したことを改めて認識させる演奏だ。ソロを弾いたものとしてはその他にイギリスの作曲家ジョン・ブルの機智に富んだ一連の作品がCD6で、師レオンハルトとは異なった快活なアプローチで仕上げられているが、このセットにはクープランやラモーなどのフランス物が含まれていないのが残念だ。
協奏曲ではバッハの2曲の『チェンバロ協奏曲』と『三重協奏曲イ短調』がCD5に収録されている。いずれの曲も急速楽章では歯切れの良いマルカートのリズムを強調した斬新な解釈がバッハへの鮮烈なイメージを残す演奏だ。尚『三重協奏曲』ではヴァイオリンにフランソワ・フェルナンデス、そしてトラヴェルソには弟のマルク・アンタイが協演しているが、ここではまた日本を代表する古楽器奏者、チェロの鈴木秀美とヴァイオリンの寺神戸亮がアンサンブルのメンバーに名を連ねている。その他にアンタイが通奏低音のオルガンとチェンバロを演奏したCD1のコレッリ作品集及びCD3のバッハのオルガン用『トリオ・ソナタ』はどちらもリコーダーのためにアレンジされた編曲物で、CD8のテレマンの『音楽家の練習曲集』でもやはり彼はさまざまなソロ楽器をサポートするアンサンブルのかなめでもあり、まとめ役にまわっている。
ミドル・プライスの8枚組の箱物でブックレットは上質紙で96ページあり、解説の他に詳細な演奏家名や使用楽器並びに録音データが掲載されている。クラムシェル・スタイルではなく蓋を取り外すカートン・ボックス入りだが、しっかりした装丁とコレクション使用のデザインに好感が持てる。音質は鮮明で特にチェンバロの高音の伸びが良く、また中低音も楽器の胴体の共鳴音がしっかり採音されていて華奢な印象はない。
CD4はドメニコ・スカルラッティのソナタ集で、大型のイタリアン・チェンバロを使用したはじけるような音色と一気呵成の集中力による造形が、作品の野心的な試みを鮮やかに再現している。CD7はフレスコバルディの作品集になり、ここでもその鮮烈なイタリアンの響きが活かされている。フレスコバルディは1583年に生まれた作曲家で、ローマでは教会オルガニストとして活躍したが、これらの曲集はさまざまな形で対位法の手法が試みられていて、その華麗な音響はアンタイならではの柔軟なテクニックによって、咲き乱れる花園のようなイメージを与えてくれる。バッハより100年も前にこうした音楽が存在したことを改めて認識させる演奏だ。ソロを弾いたものとしてはその他にイギリスの作曲家ジョン・ブルの機智に富んだ一連の作品がCD6で、師レオンハルトとは異なった快活なアプローチで仕上げられているが、このセットにはクープランやラモーなどのフランス物が含まれていないのが残念だ。
協奏曲ではバッハの2曲の『チェンバロ協奏曲』と『三重協奏曲イ短調』がCD5に収録されている。いずれの曲も急速楽章では歯切れの良いマルカートのリズムを強調した斬新な解釈がバッハへの鮮烈なイメージを残す演奏だ。尚『三重協奏曲』ではヴァイオリンにフランソワ・フェルナンデス、そしてトラヴェルソには弟のマルク・アンタイが協演しているが、ここではまた日本を代表する古楽器奏者、チェロの鈴木秀美とヴァイオリンの寺神戸亮がアンサンブルのメンバーに名を連ねている。その他にアンタイが通奏低音のオルガンとチェンバロを演奏したCD1のコレッリ作品集及びCD3のバッハのオルガン用『トリオ・ソナタ』はどちらもリコーダーのためにアレンジされた編曲物で、CD8のテレマンの『音楽家の練習曲集』でもやはり彼はさまざまなソロ楽器をサポートするアンサンブルのかなめでもあり、まとめ役にまわっている。
ミドル・プライスの8枚組の箱物でブックレットは上質紙で96ページあり、解説の他に詳細な演奏家名や使用楽器並びに録音データが掲載されている。クラムシェル・スタイルではなく蓋を取り外すカートン・ボックス入りだが、しっかりした装丁とコレクション使用のデザインに好感が持てる。音質は鮮明で特にチェンバロの高音の伸びが良く、また中低音も楽器の胴体の共鳴音がしっかり採音されていて華奢な印象はない。