アフリカン・リズム
アカ・ピグミーの団唱曲にリゲティとライヒの演奏が挟まる構成を取っている本作では、人類の音楽の起源とも言うべき民族音楽と現代音楽の共通項(ポリリズム、反復)を非常に分かりやすく提示してくれている。こういう構成を取っている以上、レビューもこの3種の音楽全体を語るべきなのだが、やはりまず、リゲティの演奏が素晴らしいことを書かせてほしい。「練習曲」(ちなみに13曲目は世界初録音)と銘打たれてはいるものの、非常に難曲のこれらを鮮やかに弾きこなすピエール=ロラン・エマールの技術は、さすが19才でブーレーズからアンサンブル・アンテルコンタンポランのソリストに指名されたという伝説を持つ人だけある。
もう一つの聴きどころはベルリンのスタジオで録音されたピグミーの輪唱の「響き」の素晴らしさである。アフリカ民族音楽の音源は多いが、フィールドで採取されたものも多く、ここまでの録音クオリティの音源というのは結構珍しいのではないか。逆に、この音質だからこそ、現代曲と並べた時に違和感がないとも言えるはずだ。
最後に付け足しみたいで恐縮だが、2曲しかないライヒの演奏も緊張感があって良い。どちらも多重録音をしているのだが、こういう実験をあっさりやってるところもニクイ。
もう一つの聴きどころはベルリンのスタジオで録音されたピグミーの輪唱の「響き」の素晴らしさである。アフリカ民族音楽の音源は多いが、フィールドで採取されたものも多く、ここまでの録音クオリティの音源というのは結構珍しいのではないか。逆に、この音質だからこそ、現代曲と並べた時に違和感がないとも言えるはずだ。
最後に付け足しみたいで恐縮だが、2曲しかないライヒの演奏も緊張感があって良い。どちらも多重録音をしているのだが、こういう実験をあっさりやってるところもニクイ。
シューマン:謝肉祭
当初は「指揮者アーノンクールが協奏曲を録音するときのピアノ奏者」で、次いで「近現代音楽のすぐれたピアニスト」であったエマールが徐々に活動領域を広げて、ついにロマン派のピアノソロ曲をリリースするようになった。もともと、彼は私の中で、アーノンクールと録音したベートーヴェンやドヴォルザークを聴いた限りでは、「楽譜に忠実だけれども、没個性的な面もある」と感じていた。けれども、ここに来てその評価がいい意味で覆った。
これは2006年、ウィーンでのライヴ録音。まずこれに驚く。おそらく、教えられずに聴いただけでは、「スタジオ録音」だと思ってしまうのではないか?それほどこの録音はノイズがないし、演奏は万全にコントロールされている。ライヴだからといって熱したりせず、それがこのピアニストの近現代もので見せる理知的なパフォーマンスと繋がっているというのはあながち穿った考えでもないと思うけど。それにしても見事なテクニックである。
演奏のスタイルはきわめてシャープだ。音の膨らみを警戒し、肉付きを排し、細やかな音によってつむがれたガラス細工のような音。その音によって、微細な和音や分散和音のコントロールを行っていて、ぐっと聴き手の耳をそばだたせる。ある意味クールすぎる演奏かもしれないが、決してつまらない演奏ではなく、きわめて美しい。例えば交響的練習曲の第5変奏の、万華鏡のように細かい破片を幾何学的に散りばめたような音の特異な美しさは、他の演奏では感じられなかった性質のものである。
好きな人はとことんハマる演奏だと思う。
これは2006年、ウィーンでのライヴ録音。まずこれに驚く。おそらく、教えられずに聴いただけでは、「スタジオ録音」だと思ってしまうのではないか?それほどこの録音はノイズがないし、演奏は万全にコントロールされている。ライヴだからといって熱したりせず、それがこのピアニストの近現代もので見せる理知的なパフォーマンスと繋がっているというのはあながち穿った考えでもないと思うけど。それにしても見事なテクニックである。
演奏のスタイルはきわめてシャープだ。音の膨らみを警戒し、肉付きを排し、細やかな音によってつむがれたガラス細工のような音。その音によって、微細な和音や分散和音のコントロールを行っていて、ぐっと聴き手の耳をそばだたせる。ある意味クールすぎる演奏かもしれないが、決してつまらない演奏ではなく、きわめて美しい。例えば交響的練習曲の第5変奏の、万華鏡のように細かい破片を幾何学的に散りばめたような音の特異な美しさは、他の演奏では感じられなかった性質のものである。
好きな人はとことんハマる演奏だと思う。