と、言っても物語の当時ではなく、「フイチンさん」を読んでいた当時のこと。
月刊誌ばかりの時代で、単行本なんて出ていたのかな、少女漫画とはいえ貴重な読み物でした。
勿論当時は作者の事なんて考えもせず読んでいたので、どうして漫画を描くようになったか…なんて今だから考えながら読めますね。内容的には「村上もとか」先生なので安心して楽しませて戴きました。

六三四少年編後編。父の死を乗り越え、新たに自分の剣の道を見つけ、歩んでいく六三四の成長が描かれています。

県大会でのがんばりやクラブの仲間とのケンカ（？！）、そして山に籠もっての特訓、全国大会での対決などなど、つい感情移入してしまいます。個人的には嵐子との関係がすごく好きですv

また、十一の子犬の誕生や死を通して、人間としての六三四の成長もステキなのですv

日本での漫画家修業を終え、ハルビンへ「帰国」する上田としこと戻ってからの大活躍、そして人生修行を描く第三巻。吉川さんや小泉（フミ）さん、隅田部長、欧さんなど、新たな登場人部で物語も広がりと深みを見せていく。そして、厳格な父親が持っていた意外な実像とは。

「日本内地ではもう菓子屋にはチョコレートの箱や包装紙が並んでいるだけで中身はカラッポ･･･　パルピンではまだケーキも売っているしコーヒーも飲めるのねえ。」「いや、ハルピンもずいぶん変わったぞ。７年前の満州国建国以後はこの町に住む日本人がどっと増えた。正直言って日本で食えなくて流れてくるようなロクでもない日本人も多くなったんだ･･･」（59~60頁）

描画の線が実に丁寧で、作者が何と言うかじっくり取り組んでいることが伺える力作で、本当に面白いです。そのうち、「朝の連続テレビ小説」（朝ドラ、連ドラ）に採用されるのではと期待しています。

なお、作中「董事長」と記載のある箇所（67頁、171頁、175頁）ですが、言い換えるとすれば「社長」ではなく「会長」ではないかと。あるいは、社長ならば、「董事長」ではなく「総経理」が適切なような気もします。（現在の一般論ですが、当時は違っていたのかも知れません。）