
クヒオ大佐 [DVD]
この映画はいつも仕事で疲れている人には休日に、全く頭を使わないで、ありえない、チープな作りの結婚詐欺師の物語としても楽しめるし、又、真剣に見れば、深い人間対人間の心理劇としても楽しめる多様な見方ができる稀有な映画だと思う。これを単なるチープな結婚詐欺の話として片付けることは簡単だが、その裏側には、悪意の所在も曖昧で、夢の中に生きているような、クヒオ大佐と、うすうすありえない嘘だと気づいていても、自分の境遇を一時でも夢の世界へいざなってくれるくクヒ大佐を信じたい、信じ続けたい、女性たちの、悲哀と希望に満ちた物語である。又、この映画ではあえて、物語の組み立て、細部描写にこだわることは避け、かなりチープな表現に徹しているが、そのチープさが実は人を信じさせる力を少しも弱めるものではないと言うことが解る。チープな表現とリアリティは両立するのだ。人は何かを信じたいという潜在願望が常にあるが、その対象は、決して小さな事では満たされず、より大きな、ありえないような大きな物を求めているのではないだろうか。それだから、ありえない話が真実味を帯びてしまうのだと思う。この映画を一度見てつまらなかった人は、もう一度、この映画を見て欲しい、繰り返し見ることで今まで見えなかったものが確実に見えてくると私は思う。