DVD BOOK(1)チェンバロ〜歴史と様式の系譜
日本におけるチェンバロ製作の第一人者久保田彰によるチェンバロ解説のDVDBOOK。チェンバロの構造やメンテナンスなど、詳細は『図解チェンバロメンテナンス―チェンバリストと技術者のために』に詳しい。本書はカラー写真をふんだんに使って、目でも楽しめる本に仕上がっている。DVDではチェンバリストの曽根麻矢子、水永牧子が様々なチェンバロやヴァージナルを演奏して聞かせてくれる。しかし何と言っても圧巻は武久源造による即興演奏。前奏曲とフーガと思われる。フーガに入り、多声を緻密な構造で作り上げ、そして解決に導いていく腕の冴えは驚嘆的だ。自身としても会心の出来だったのであろう。演奏しながら笑みがこぼれている。武久という音楽家がこれほどの実力を持った人であったのか!と初めて知らされた。古楽はもはや珍しくも特別のものでもなくなったが、まだチェンバロに馴染みがなく、聞いてみたいと思っている人にお勧めしたい、と同時に、今までチェンバロ演奏を見たことのなかった愛好家にも是非お勧めしたい。
バッハ:ゴルトベルク変奏曲
曽根麻矢子のゴルトベルク変奏曲新盤は平均律第1巻バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻と同様に良いと思う。
「以前の曽根麻矢子なら、第25変奏のあとは、一気に猛スピードで最終変奏まで突っ走る」と私は思って聴いてみたところ、第26変奏以降を聴いて「あれっ、普通だな」と思ってしまった。クオドリベットを聴いたあとは「もう一度聴きたい」と思わされてしまって、第26変奏以降をもう一度確認のために聴いてしまった私であった。私はゴルトベルクを多数聴いたが、こんなことは初めてだ。
それにしても、曽根はみずから、この商品のリーフレットに
「繰り返し」は本当は全て録音しましたが(中略)CD 1 枚に収まらない!(中略)ということで、ところどころ繰り返しをカットしています(中略)でも録音中にその事実に気付いていたら、テンポをわざと速くしなければならなかったので、かえって気が付かなくて良かった(笑)
と、書いているが、こんなこと書いたらリスナーに悪い印象を与えると彼女は思わなかったのだろうか。こんな演奏家初めてだ。 と い う こ と で、ますます気に入った。
Harpsichord by David Ley (2005) after Johann Heinrich Graebner, Dresden 1739
[録音]2008年9月6日〜8日 パリ音楽院スタジオ
「以前の曽根麻矢子なら、第25変奏のあとは、一気に猛スピードで最終変奏まで突っ走る」と私は思って聴いてみたところ、第26変奏以降を聴いて「あれっ、普通だな」と思ってしまった。クオドリベットを聴いたあとは「もう一度聴きたい」と思わされてしまって、第26変奏以降をもう一度確認のために聴いてしまった私であった。私はゴルトベルクを多数聴いたが、こんなことは初めてだ。
それにしても、曽根はみずから、この商品のリーフレットに
「繰り返し」は本当は全て録音しましたが(中略)CD 1 枚に収まらない!(中略)ということで、ところどころ繰り返しをカットしています(中略)でも録音中にその事実に気付いていたら、テンポをわざと速くしなければならなかったので、かえって気が付かなくて良かった(笑)
と、書いているが、こんなこと書いたらリスナーに悪い印象を与えると彼女は思わなかったのだろうか。こんな演奏家初めてだ。 と い う こ と で、ますます気に入った。
Harpsichord by David Ley (2005) after Johann Heinrich Graebner, Dresden 1739
[録音]2008年9月6日〜8日 パリ音楽院スタジオ